戸隠のヒメアジサイを東京の片隅で【初めてのオキシベロン】

 

2026/07/08


戸隠ヒメアジサイ紀行の番外編です。


実は今回の戸隠旅行で、地元の方からヒメアジサイの挿し穂を頂き挿し木にしました。


※ご縁でお話を伺う機会があり、例外的に分けていただきました。配布や販売は行われていない場所ですので、そっと見守っていただければ幸いです。


目次


東京で見比べる戸隠のヒメアジサイ

頂いたのはヒメアジサイタイプとニワアジサイタイプヒメアジサイの両系統。本家本元、由緒正しい系統です。

ニワアジサイタイプヒメアジサイ

解体して挿し穂を作るついでに、切り落とした葉っぱを撮ってみました。
鋸歯が荒く野生味があります。ざらざらな質感も相まってシソみたいです。

ニワアジサイタイプヒメアジサイ

ニワアジサイタイプは葉の表だけ毛があります。3枚目のヒメアジサイタイプの子は、葉の表はツルツルですが裏が毛深いです。

ヒメアジサイタイプヒメアジサイ

それぞれ個性がありますね。

特にニワアジサイタイプはエゾアジサイの血が濃いので、我が家にある湘南出身のものとかなり雰囲気が異なります。葉っぱもですが緑枝まで毛深く、葉柄がはっきりした赤紫色になります。

同じエゾアジサイ系統の雪てまりに似ていますが、うちの雪てまりは葉柄は赤くなりませんので見分けがつきます。


貴重な系統を受け継ぐ機会に恵まれて光栄です。



挿し木の手順


07/08に挿し木作業を始めました。用土は細粒の鹿沼土と、ゼオライトを1割程度加えました。イオン交換により雑菌繁殖を抑え、用土の水捌けをよくする目的です。


この挿し木は絶対に成功させたかったので、秘密兵器を投入しました。それがこちら。

なかなか強烈な臭いがします⋯⋯


オキシベロン(有効成分名:インドール酪酸)

です。



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インドール酪酸(IBA)とは


植物ホルモンの中でカルス形成や発根を促す働きを持つ化合物をオーキシンといいます。

オーキシンはいくつか見つかっていますが、最も主要なものはインドール酪酸(IAA)であり、より安定性が高い形に変えたものをインドール酢酸(IBA)といいます。

どちらも天然に存在し、植物にとっての主力はインドール酢酸、貯蔵用として体内にインドール酪酸を蓄えています。


ちなみに合成オーキシンでよく知られるのがナフタレン酢酸 (NAA)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 (2,4-D) です。

最も園芸界で有名な発根剤「ルートン」の主成分α-ナフチルアセトアミドは、このナフタレン酢酸をより安定性の高い形(アミド)に加工したものです。植物が吸収し自前の酵素で分解すると、体内でナフタレン酢酸に戻ります。

2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 は特に強力な作用を持ち、なんと除草剤に使われています。高濃度のオーキシンにさらされた植物は、逆に伸長を止めてしまう、という仕組みを利用しています。



失敗しないオキシベロンの使い方


オキシベロンには二通りの使い方があります。

長時間低濃度での浸水と、短時間高濃度での浸水です。

一般的な樹木は40倍で6〜24時間基部を浸水、又は2倍で20秒基部を浸水と説明書にありました。

※正確な倍率、浸水時間は植物の種類により異なります。

今回は初めて、しかも繊細なヒメアジサイ相手ということもあり、2倍希釈で20秒浸水の使い方を採用。こちらの方が浸水時間が短い分、薬害のリスクは低いそうです。

ビーカーできっちり2倍希釈液を作り、一本一本切り口を浸して20秒数えてから土に挿しました。

トラブルもなく安全に挿し木作業を終えられましたが、ルートンと違って塗っている実感がなく、終始「これで効くのか⋯⋯?いいのか⋯⋯?」と首を捻りつつではありました。効果のほどはこれからのお楽しみですね。



その後の様子

ホルモン剤のお話はこれくらいにして⋯⋯話は挿し木の様子に戻ります。

外は猛暑ですので、冷房の効いた室内で管理することにしました。

2026/07/14

挿し木から約一週間後です。ひとまず葉の萎れや青臭い匂いなどはなく、元気そうです。

2026/07/14

一部のニワアジサイ系の子は早くも芽が動き出しています。早すぎる芽吹きは失敗の元でもあるので、ハラハラしっぱなしでした。

2026/07/14


来る日も来る日も水やりを続け、8月の頭には一部の元からついていた新芽が少しだけ成長してきました。そろそろ発根したかな⋯⋯?と思い、さらに1週間ほどして水やりを3日に1回に引き伸ばしても萎れず、発根を確信しました。そこからカーテンの外に移し、サーキュレーターで風を当て始めました。


2026/08/18


8月中旬過ぎには外に出しました。当初は9月中旬過ぎを予定していましたが、今年の東京の8月は奇跡的に涼しかったためです。エルニーニョ様様ですね。

液肥をあげると全体的に葉の色が濃くなり、根は張っているのに芽が動かなかった子もようやく成長し始めました。思ったより挿し穂そのものの栄養が足りていなかったようです。



オキシベロンの効果はどうだったのか

肝心の効果のほどですが、なかなか癖のある効き方だと感じました。

意外にも本格的に芽が動くタイミングは、ルートン使用時より遅かったのです。どうもオーキシンが切り口に集中する影響で、挿し木の成長が根原基へ強制集中するようでした。発根そのものは10日ほどで始まりますが、地上部の発達はむしろ挿し木3週間後でした。

とはいえ、発根が爆速で始まるのは間違いありません。何より一本一本切り口に塗り塗りする必要がなく、圧倒的に作業が楽でした。

よいものを手に入れました。たくさん挿し木をする予定のある方にはおすすめです。




現在(2026/09/18)の様子

その後秋雨の恩恵をたっぷり受け、現在このように育ちました。

2026/09/18

2026/09/18

一株だけコガネムシに穴だらけにされましたが、概ね元気そうです。



9月に入って気温がぐっと下がる日が続くと、本格的に成長し始めました。やはり普通のアジサイより、少し涼しい方が好きみたいです。来年以降、平地の東京の気温に順応してくれるとよいのですが⋯⋯。


持ち主の方に「頑張って育ててください」と応援していただきました。無事にお花が咲いたら、お礼と共に写真をお送りしたいなあ⋯⋯などと妄想したり。

差し当たっての課題は冬越しですね。引き続き頑張って育てたいと思います。



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